ホテルの見る夢 子どもたち | Private works – text

hotel_kodomo

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大きな古いホテルにいる。
オカルトめいた捕物が行われ、わたしたちはモウレツに逃げているところ。
ものすごく怖いことがおこったのだが誰も思いだせない。
暗くて瀟洒な廊下、階段を走りぬけ、屋上にむかう。

屋上の駐車場にはポッカリと大きな穴が空いており、
穴の内部、対角線上に作り付けのはしごが備えられ、
階下の駐車場へと続いている。

穴を降りるわたしたちのまわり、
ふいに小さな水着姿の子どもたちがどっと沸く。
10才に満たない体の細くぴんぴん動く元気な子どもたち。
屋上から飛び降りるもの、穴の壁を器用につたうもの、はしごを使っておりるもの。
赤、青、黄色の水泳帽の群れが色とりどりに駐車場に飛び込む。
わたしたちは助けようと手を伸ばすが、その数と色に圧倒されなすすべもない。

子どもが飛び込むと、駐車場のコンクリートの床は、水面であるかのように豊かに波打つ。
子どもたちの嬌声が穴の内部に反響し、ほんとうのプールにいるよう。
次から次に床に飛び込む子どもたちを、めくるめくうっとりとした心地で眺める。

これはホテルの見ている夢で、
子どもたちはすでに大きく育っていることをわたしたちは知っている。
先ほどの捕物が悪い夢だとしたら、
これはホテルのみる良い方の夢だなあと思う。

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Das Seehundsfell | 夢でみたこと

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